北九州市立大学同窓会

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大学だより

平成27年度 第65回学位授与式

 平成27年度第65回学位授与式が桜には少し早い3月26 日(土)、北方キャンパスの体育館兼講堂で行われた。
 いくぶん緊張したスーツ姿の男子卒業生、華やかに着 飾った明るい笑顔の女子卒業生がそろい、2階席と会場 の後方に臨時に設けられた椅子席は卒業生の保護者で埋 まった。
 学位授与式は午前10時、在学生吹奏楽団の奏でるファ ンファーレで始まり、開式の辞、学位授与、学長告辞、理事 長挨拶、来賓祝辞、祝電披露と進んだ。
 本年度の学部卒業生は1,251人(男子591人、女子660 人)、大学院修了者・学位授与者は196人(男子133人、女子 63人)で、この中には海外からの留学生73人が含まれる。
 近藤倫明学長は告辞で、「卒業生の多くは平成24年4 月、新入生として本学に入学したが、その年は本学が2つ の挑戦的な取り組みを始めた記念となる年であった」と 振り返られた。「その1つは、グローバル化、国際化への取 り組みとして、そのプログラムであるグローバル人材育成 事業をスタートさせたこと。この事業は平成24年度の文部 科学省の『グローバル人材育成推進事業』に採択され、多 くの学生がこのプログラムによって海外留学や海外イン ターンシップに参加ができた。もう1つは、地域と環境に 関する取り組みの『環境ESD』。こちらも平成24年度、文部 科学省の『大学間連携推進事業』に採択された。大学は小 倉魚町にサテライトキャンパス『まなびとESDステーショ ン』を設けたが、ここは地域と環境について情報の発信、 生活の場面での課題の発見と解決に向き合う知識基盤に なると信じる」と述べられた。
 石原理事長は「日本は人口減少期に入り、地方の人口は 減るが東京圏にはなお人口集中が進んでいる。地方を元 気よくし、地方創生を実現しなければ地方はあぶない」と 危機感を示され、「われわれはどこにいても常に世界の動 きに関心を持ち、広い視野から地域をみて行動することが 大切だ」と諭された。
 来賓の北橋健治市長、戸町武弘北九州市議会議長の祝 辞と続き、祝電が披露された後、式は在学生総代岡村遥さ ん(外国語学部英米科)が「すべての出会いを一生に一度 だと思い、大切にすることがいかに重要かということを先 輩の背中を見て強く実感してきた、新しい世界での新た な出会いを『一期一会』として大切にしてください」と送辞 を述べた。これを受け、岡磨友子さん(文学部人間関係学 科)が卒業生総代として謝辞。「私たちの多くは今から社 会へ旅立ちます。これからはここまで育んでくださった 方々、そして社会への恩返しをする番だと思います。この 大学で学んだことを活かし、どんな時も心を込めて仕事 に取り組み、社会や人のために自分でできることを精いっ ぱい頑張ります」と結んだ。
 学位授与式の最後は校歌斉唱。在学生吹奏楽団の演奏 に和して1番、3番、5番を斉唱。式は「閉会の辞」を迎えた。
 学位授与式後の会場前やキャンパスの各所に、春の 霞むような陽の中を、花束を抱えたグループや、家族ら が記念写真を撮ったり、別れを惜しむかのように談笑し たりするシーンが広がった。同窓会館のすぐ傍に位置す る弓道部は今年も部室前に部員総出で円陣を組み、卒 業していく先輩部員を胴上げして送り出した。ほほえま しい光景だった。

【近藤倫明学長告辞〈要旨〉】
 学士課程を卒業する多 くの皆さんは、4年前の 平成24年4月に新入生と して本学に入学しまし た。この年は大学にとっ ても、2つの挑戦的な取 組みを始めた記念となる 年でもありました。
 1つはグローバル化、つまり国際化への取り組みで す。政治・経済・文化・あらゆる分野で国境を越えた地球 規模での流動が進展しています。本学は教育・研究にお けるグローバル化に、本学創立の出発点である小倉外 事専門学校以来積極的に取り組んできました。この取り 組みを時代に呼応すべく、さらに全学的に進める取り組 みとして、「世界(地球)とつながる」を合言葉に、グロー バル人材育成のプログラムを始めました。この取り組み は、平成24年度、文部科学省の「グローバル人材育成推 進事業」に採択されました。多くの学生は、このプログラ ムの中で海外留学や海外インターンシップに参加して います。卒業生の皆さんの中にも、このプログラムで海 外を経験した方が数多くいます。
 国際化に伴う多様性の中で多文化を理解するために は、世界を経験するとともに、絶えず自国の文化・歴史を 学び、コミュニケーション力を身に付け、表現力を養う 必要があることを学んだことと思います。地球規模での 文化・歴史・価値の共有と理解、そして未解決の課題へ の相互理解は卒業後においても、未来を担う皆さんに 大学から託されたこれからの課題でもあります。
 もう1つは、地域と環境に関する取り組みです。本学 を設置する北九州市は、過去において明治以降日本の 近代化を支え、昨年「明治日本の産業革命遺産」として ユネスコの世界文化遺産に登録された歴史的文化施設 を有する都市です。また戦後においては、日本の四大工 業地帯の1つとして復興を支えました。その一方で負の 遺産として深刻な公害を経験した都市でもあります。こ の公害に対して、未来を担う子供たちを想うお母さん方 が中心となり、市民と産官学が類まれな協力によってこ の公害を克服しました。ここ北九州市は、今では世界も 認める環境未来都市として着実に新たな歩みを進めて います。
 本学においてもこの近代化における歴史の継承とし て設置した国際環境工学部に加え、文系の学部・学群の 皆さんにも「環境ESD」、つまりユネスコが推進する持続 可能な社会の発展のための教育として、地域と環境に ついて学ぶ取組みを始めました。この教育プログラムは 同じく平成24年度、文部科学省の「大学間連携推進事 業」に採択されました。大学は、市内の小倉魚町にサテ ライトキャンパス「まなびとESDステーション」を設置 しています。ここをベースに、地域創生学群の皆さんを はじめ学部を越えて北方キャンパスで学ぶ多くの学生 の皆さんが、地域と環境について北九州地域を舞台に 授業やボランティア活動を通して学んだことと思いま す。この経験は卒業後に皆さんが生活する地域におい ても、生活の場面での課題の発見と解決に向き合う時 にその知識基盤になると信じています。
 この2つの取り組み、つまり国際化と地域・環境の取 り組みは、本学の設置理念である「教育・研究そして社 会貢献を通して地域社会、地球規模の世界の発展に貢 献すること」を具体的な教育プログラムとして実践する ものです。
 皆さんが、激しく変化する予測不可能な現代社会を 生き抜くためには、この社会の様々な課題を自ら発見 し、解決するための基盤となる能力と、専門分野の知見 を修得することが不可欠です。本学の教育課程を修了 し、今日晴れて本学を卒業する皆さんは、この基盤力と それぞれの専門知識を修得しています。
 皆さんは大学という高等教育の最後の段階を卒業 し、社会を構成する一員として新たな一歩を踏み出しま す。皆さんの前にはこれまで経験したことのない未知の 世界、厳しい現実があります。その未知の世界と現実に 社会人として直面しなければなりません。
 これからは、本学で身に付けたその学びを社会人と して自らの人生に生かすことが、皆さんに課された人生 を紡ぐという責任です。混迷する時代に、自らの力を信 じ、自らの志を高く掲げ、安きに流れず、日々努力を重 ね、挑戦することを忘れず自らの人生を生き抜いてくだ さい。「北九大プライド」、この言葉は本学の卒業生であ ることへの自信と誇りです。この北九大プライドを持っ て、臆せず新たな世界に旅立って下さい。
 本学は来る新たな年度に創立70周年を迎えます。そ して未来へ向けて北九大100年を想起した新たなビ ジョンを掲げます。皆さんも一人ひとり自らの人生にお ける「マイビジョン」を掲げ、未来に向かって成長の歩み を続けてください。本学を旅立つ皆さんに幸多からむこ とを心より願い、私の告辞とします。

【石原進理事長挨拶〈要旨〉】
 昨年行われた国勢調査 によると、昨年10月時点で の日本の人口は1億2,711 万人、前回、2010年の調査 に比べ95万人の人口減少 となりました。つまりこの 5年の間に日本から北九 州市と同じ規模の都市が 1つ消えた計算になります。一方、東京・千葉・埼玉・神奈川 の1都3県ではこの5年間に51万人増加しており、ますま す東京圏への一極集中が進んでいます。
 これ以上の一極集中が進めば、地方の活力は失われ、 日本の再生は難しくなります。地方創生については、こ れまで歴代内閣が様々な取り組みを行ってきましたが、 一極集中の流れは止まりませんでした。加えて日本は数 年前から人口減少時代に入り、今後それが加速度的に進 み、900近い市町村が消滅するという指摘もあります。現 政権は地方創生を政策の柱として取り組んでおり、今、 地方創生を実現しなければ地方を再生するチャンスは 二度と来ないと言ってもいいのではないかと思います。
 九州は東京圏と比べて自然、食、人情などが豊かで、物 価も安く、生活しやすく、子育てにも適しています。出生 率も東京1.15に対し、九州は1.61です。元気な地方なくし て日本の将来はありません。我々は産業を活性化し、全 力で一極集中の流れを止めなければなりません。
 ここ数年、アベノミクスにより株価、企業収益、雇用 などが大きく改善し、日本経済も長い低迷から脱し、将 来へ向けた明るい光が見えてきました。しかし、今年に 入り、日本を取り巻く環境も再び不透明さを増してき ました。
 日本の経済成長率は四半期ごとに一進一退を繰り返 しており、自律的な経済成長は実現していません。中国 経済の低迷や、欧州金融不安など、世界的な景気後退の 可能性も出てきました。我々はここで何としても踏ん張 り、活力ある日本を取り戻さなければなりません。また 世界は紛争が絶えませんし、難民、テロ、貧困、環境など 課題が山積しています。日本もこうした問題から逃れる ことはできません。我々は地域にあっても、常に世界の 動きに関心を持ち、広い視野から地域を見て行動するこ とが大切です。
 北九州市は人口が96万人に減少し、かつての活力あふ れる街とすべく、懸命に市の活性化に取り組んでいま す。今年1月には、「高年齢者の活躍や介護サービスの充 実による人口減少・高齢化社会への対応」をテーマとし た国家戦略特区に指定されました。ICT、ロボット技 術など、北九州の技術力の発揮や、女性や高齢者の活躍 などが期待されます。人口減少、高齢化への対応は日本 全体の課題であり、その解決に向けてパイオニアの役割 を果たさなければなりません。
 皆さんは卒業後、世界をフィールドとして活躍して欲 しいと思いますが、北九州市立大学で学び、北九州市に お世話になったことを忘れないで欲しいと思います。立 派なリーダーとなり、北九州市の発展に貢献していただ くことを期待しています。
 最後になりますが、これまで皆さんの成長を見守り、 支えてくれた方々への感謝を忘れず、本学の卒業生であ ることに誇りを持ち、自らの人生を切り拓いてください。

【岡 磨友子さんの謝辞〈要旨〉】
 4年前、生まれ育った北九州市で福祉を学びたい、そし てこの地域についてもっと知っていきたいと思い、この大 学に入学しました。
 高校の時と違い、大学生活は「自由」そのものでした。自 分の興味のあることや、何かしらの目標、自分が好きなこ とに対して、やる気次第でどんなことでも行動することが 出来るという点がとても魅力的でした。しかし、振り返る と、私にはこの「自由」というものの難しさを感じずにはい られませんでした。
 大学では、学問や留学、サークルや地域活動など様々な ことに打ち込む友人たちを傍らで見てきました。そんな友 人たちと私自身を比べて、何も成し遂げていない、まず一 体何をしたいのかが分からない、と葛藤する時期がありま した。そんな虚ろで不安な日々を過ごしていく中で、ある 時、私は人間関係学科のとある授業に出会いました。
 心理学や社会福祉、スポーツや社会学、環境、教育など、 多様な視点から「人間」と向き合っていく中で、普通に楽し そうに過ごしていても、みんな生きづらさを何かしら抱え ていること、そして私はその「生きづらさ」を抱える人に寄 り添っていきたいから福祉を勉強するんだ、という私自身 が忘れていた大学に入学した時の目標を思い出しまし た。そして、「自由」の本当の意味を理解し、充実した大学 生活を送ることが出来ました。
 私の恩師であるゼミの先生との出会いは私の大学生活 をより充実したものに変えてくれました。学問を通じて私 たちに大切なことを教えていただき、いつも私たちゼミ生 の心に寄り添ってくださいました。ゼミは本当に温かく、 居心地のよい場所でした。
 私はこの4年間で人生の良い経験をたくさんさせても らいました。充実した大学生活を送ることが出来たのはい つも家族の支えがあったからです。心が疲れた時もそっ と支えてくれた両親、わがまま放題で過ごしてきた私です が心の中ではいつも感謝していました。今日は素直にあり がとうと伝えたいです。
 私たちの多くは今から社会へ旅立ちます。これからは ここまで育ててくださった方々、そして社会へ恩返しをす る番だと思います。この大学で学んだことを活かし、どん な時も「心」を込めて仕事に取り組み、社会や人のために 自分ができることを精いっぱい頑張ります。

【岡村遥さんの送辞〈要旨〉】
 4年前にこの場で入学式を迎えられたこと、大学生活 での思い出を懐かしく振り返るとともに、この場から旅立 たれ、新たな人生の第一歩へと希望で胸が一杯なのでは ないでしょうか。私達在学生も先輩方と過ごした思い出、 先輩方から学んだ数々のことが蘇ってまいります。
 思い起こせば、入学したての時、新たな環境に身を置き 不安や戸惑いを感じていた私たちに親身に接してくださ いました。また、講義、部活動、サークル活動、留学などを通 し、相談に乗っていただいたこと、励ましていただいたこ とは私達の支えとなっていました。
 私自身、目標に向かって揺らぐことなく、まっすぐに自ら の意志、明確な目的を持って留学される先輩方の姿に感銘 を受けました。向上心を常に持ち、新しいことへと次々に チャレンジされる先輩方との出会いは大切な宝物です。 「一期一会」という言葉通り、すべての出会いを一生に一度 だと思い大切にするということがいかに重要であるかとい うことを先輩方の背中を見て強く実感してきました。
 出会いにより、人と人との輪が広がり、その出会いが絆と なり喜びや苦労を分かち合うことが出来る仲間となること。 こうして出会いから築き上げた仲間の存在は、これからの 人生を支えていく重要な財産となっていくことと思います。
 多くを学ばせていただいた先輩方が卒業されると思う と、寂しさがこみあげてまいります。今後は、先輩方から学 んだ伝統を受け継ぎ、後に続く後輩たちの道標となるよ う、北九州市立大学のさらなる発展に向け、在学生一同精 進してまいります。
 この式典が終わり、この会場から一歩外へ踏み出せば、 それぞれの新たな道へと歩んでいくこととなります。それ は慣れ親しんだ人々、環境との別れでもあります。これから 先輩方が歩んでいかれる新しい世界には幾多の困難が待 ち受けていることでしょう。しかし、その新しい世界でもこ れまで築き上げてきた仲間の存在があることを忘れずに、 また新たな出会いを大切にして、邁進し続けてください。

北友会会報第114号(平成28年7月15日発行)掲載