北九州市立大学同窓会

HOME > 活動> 大学だより >学位授与式

大学だより

平成28年度 第66回学位授与式

 平成28年度の学位授与式(卒業式)が3月25日(土)、北方 キャンパスの体育館兼講堂で行われた。本年度の学部卒 業生は1,287人、大学院修士・博士前期課程修了生143人、大 学院専門職学位課程修了生30人、大学院博士後期課程修 了生11人の計1,471人(うち海外からの留学生59人)。
 きりっとネクタイを締めたスーツ姿の男子卒業生・修了 生、華やかに着飾った明るい表情の女子卒業生・修了生が そろった。2階席と会場後方に設けられたいす席は卒業 生・修了生の保護者らで埋まり、講堂に入りきれなかった 保護者らは本館A101教室などで式典を見守った。  学位授与式は午前10時、在校生吹奏楽団の奏でるファ ンファーレで始まった。
 28年度末で任期満了を迎える近藤倫明学長が総代4 人に学位記を手渡した後、最後の告辞に立った。学長は 「本学は平成25年度から新たなカリキュラムをスタートさ せた。卒業生の多くはその年4月に新入生として本学に 入学し、それから4年間、新たな教育プログラムで学んだ 初めての卒業生だ」と振り返り、「新たな教育プログラム は、グローバル化への取り組み、地域と環境に関する取り 組みで、これは本学の教育理念を具体的に実践するもの である」「本学は2016年、創立70周年という節目の年を迎 えたが、北九大100年を目指した新しいビジョンを策定し た。皆さんも、マイビジョンを掲げ、成長の歩みを続けてほ しい」などと述べ、「皆さんに幸多からんことを」と締めく くった。
 同じく年度末で任期満了となる石原進理事長があいさ つ。「昨年は創立70周年、節目の年だったが、将来の北九大 100周年に向けた一歩とすることができたことをうれしく 思う」「社会に出ることは、活躍の機会をつかむ絶好のチャ ンス。果敢にチャレンジしてほしい。苦難に遭遇するかも しれないが、苦難を自らの経験として成長してほしい。新 天地で活躍されんことを」とエールを送った。
 来賓の北橋健治北九州市長、井上秀作北九州市議会議 長が祝辞を述べた後、祝電を披露。在校生総代の荒木勇 太さん(経済学科)が「部活に果敢にチャレンジされる先 輩が刺激になり、さまざまな壁を乗り越え、成長につなが りました。在学生一同、先輩方が築いてこられた伝統を守 り、さらに発展させるよう頑張っていきます。先輩たちは、 どんなつらいことがあろうとも、一人ではありません。仲 間がいます。挑戦を続けてください」と送辞。
 これに応え、卒業生を代表して小柳綾夏さん(法律学 科)が「自ら動かないと得られるものは少ない。自ら動けば 得られるものは多い。密度の濃い学生生活を送ることが 出来た。私ごとだが、高校卒業の直前に母を病気で失っ た。そうした中で、大学に進学できたのは父の存在抜きに は考えられない。お礼を言わせて下さい。お父さん、無事 卒業できました」と答辞、会場に静かな感動を与えた。
 最後は、在校生吹奏楽団の演奏で校歌の一番、三番(北 方キャンパス編)、五番(ひびきのキャンパス編)を斉唱し て、閉式となった。

【近藤倫明学長告辞〈要旨〉】
 学士、修士、博士の学位 を授与された皆さん、ご 卒業おめでとうございま す。また、ここまで卒業生 を育て、支えてこられた ご家族の皆様、感慨もひ としおのことと思いま す。ご家族の皆様にも心 からお慶びを申し上げます。卒業する学生たちは多くの 皆様に支えられた北九州市立大学での学生生活を良き 思い出として、キャンパスから羽ばたいてくれることと 確信しています。
 学士課程を卒業する多くの皆さんは、4年前の平成 25年4月に新入生として本学に入学されました。この年 は、本学が新たな教育を目指す取り組みを始めた年で もありました。
 大学は、人を育てるために絶えず教育の質を改善し、 向上する取り組みを続けています。皆さんが入学した 平成25年度に、すべての学部で、新たなカリキュラムを スタートさせました。学士課程それぞれの教育・学位プ ログラムが見直され、学位を授与するために必要な身 に付けるべき能力を学科・学類ごとに定め、学びの中で その力を養成するために日々大学で学ぶ科目を体系化 した新たなカリキュラムです。それから4年を経た今、 皆さんはこの新たな教育プログラムで学んだはじめて の卒業生であります。今日の学位授与式で授与される 学位記は新しいカリキュラムによる学修と自己研鑽の 成果として、皆さんがそれぞれの専門分野の学位にふ さわしい能力を身に付けたことを大学が証明するもの です。
 この新たな教育プログラムには本学の設置理念に基 づく2つの取り組みが含まれています。1つはグローバ ルへの、つまり世界に羽ばたく国際化への取り組みであ り、もう一つは、この地、北九州市に根ざす地域と環境に 関する取り組みです。すなわち、このプログラムは、本学 が設置理念に謳う「教育・研究そして社会貢献を通して 地域社会、地球規模の世界の発展に貢献すること」を具 体的に実践するものなのです。
 グローバル化、つまり国際化についてみると、政治・経 済・文化・あらゆる分野で国境を越えた地球規模での流 動が進展しています。本学は教育・研究におけるグロー バル化を、70年前、本学の前身である小倉外事専門学校 が創立されて以来積極的に進めています。時代に呼応 し、この取り組みを一層深めるべく、文部科学省の「グ ローバル人材育成推進事業」の支援を得て「世界(地球) とつながる」を合言葉に全学的な取り組みを展開してい ます。多くの学生が、このプログラムの中で海外留学や 海外インターンシップに参加しています。卒業生の皆さ んの中にも、このプログラムで海外を経験した方が数多 くいます。そして、国際化に伴う多様性の中で多文化を 理解するには、世界を経験するとともに、絶えず自国の 文化・歴史を学び、コミュニケーション力を身に付け、表 現力を養う必要があることを学んだことと思います。地 球規模での文化・歴史・価値の共有と理解、そして未解 決の課題への相互理解と挑戦は卒業後においても、未 来を担う皆さんに託された課題であります。
 もう1つは、地域と環境に関する取り組みです。本学 を設置する北九州市は、過去において明治以降日本の 近代化を支え、また戦後においては、日本の四大工業地 帯の一角として戦後復興をものづくりの拠点として支 えてきました。その一方で負の遺産として深刻な公害を 経験した地域でもあります。この歴史の中で、市民と産 官学は類まれな協力体制をつくり、公害を見事に克服 してきました。ここ北九州市は、今では世界も認める環 境未来都市として新たな歩みを着実に進めています。 本学においてもこの歴史の継承として今年度学部創設 15周年を迎えた国際環境工学部を中心に、環境技術・新 エネルギーの研究・教育を進めています。加えて、全学 的に「環境ESD」、つまりユネスコが推進する持続可能 な社会の発展のための教育として、地域と環境につい て学ぶ取り組みを文部科学省の「大学間連携共同教育 推進事業」の支援を得て進めています。本学は、市内の 小倉魚町にサテライトキャンパス、「まなびとESDス テーション」を設置し、ここをベースに、地域創生学群の 皆さんをはじめ学部を越えて多くの学生が、地域と環境 について北九州地域を舞台に授業やボランティア活動 を通して実践的に学んでいます。この経験は卒業後に 皆さんが生活する地域においても、様々な場面で課題 の発見と解決に向き合う時にその経験基盤になるもの と信じています。
 6年前の東日本大震災、また昨年4月に発生した熊 本・大分での地震などの自然災害、アフリカ・中東からの 止まぬ難民の問題、地球規模のテロの恐怖、英国のEU からの離脱やアメリカ大統領選挙の結果など、現代社 会では、予測不可能な激しい変化が現実に起こってい ます。この社会を生き抜くためには、社会の様々な課題 を自ら発見し、解決するための基盤となる能力と、専門 分野の知見を修得することが不可欠です。
 皆さんは大学という高等教育の最後の段階を卒業 し、社会を構成する一員として新たな一歩を踏み出しま す。皆さんの前にはこれまで経験したことのない未知の 世界、厳しい現実があります。これからはその未知の世 界と現実に社会人として直面しなければなりません。現 代社会を生き抜くためには、基盤力、専門知識に加えグ ローカル、つまりグローバルな思考とローカルにおける 行動力を併せ持つ人となることが求められます。
 これからは、本学で身に付けたその学びを社会人と して自らの人生に生かすことが、皆さんに課された人生 を紡ぐという責任です。混迷する時代に、自らの力を信 じ、自らの志を高く掲げ、安きに流れず、日々努力を重 ね、挑戦することを忘れず本学の卒業生であることへ の自信と誇りを持って自らの人生を生き抜いてくださ い。
 本学は今年度創立70周年を迎えました。そしてこの 年に、新たに大学が踏み出す未来へ向けて、北九大100 年を想起した新たなビジョンを掲げました。北九州市立 大学から世界へ、そして活力ある未来へ持続可能な社 会の創造を謳っています。このビジョンは大学だけでな く、皆さん一人ひとりのビジョンの総体でもあります。 皆さん一人ひとり自らの人生における「マイビジョン」 を掲げ、未来に向かって成長の歩みを続けてください。

【石原進理事長挨拶〈要旨〉】
 昨年は本学にとりまし て、創立70周年という節目 の年となり、新図書館の誕 生をはじめ、世界各国から 研究者をお迎えしたアジ ア未来会議の開催や、学 生の皆さんとともにお祝 いした記念式典など、大変 充実した年となりました。この記念すべき年を卒業される 皆さんとともに迎え、将来の100周年に向けた第一歩とす ることができたことを、大変嬉しく感じています。
 さて、企業の業績改善や高水準の有効求人倍率など、明 るい兆しも見えてきた日本経済ですが、この好循環を持 続的な成長路線へ結びつけ、名目GDP600兆円を実現す べく、国をあげた取り組みが進められています。
 特にその重要な鍵として、IOTや人工知能、ビッグ データ等の革新的技術を活用した「第4次産業革命」が掲 げられています。
 この産業革命によって、これまでの社会システムや産 業構造、就業構造などが一変する可能性もあります。
 これまでにも、技術革新によって新たなビジネスモデル が創出されてきたように、皆さんにとっては、活躍の機会 を掴む絶好のチャンスでもあり、この変革の時代に果敢に チャレンジしていただきたいと思います。
 また、日本経済の未来を切り拓いていくためには、アジ アなど海外の活力を取り込むことが必要であり、インフラ システムの海外輸出や対日投資誘致の強化なども進めら れていきます。
 このグローバル時代に対応していくため、社会におい ては、語学力はもちろん、その国の文化や歴史、商習慣な ども理解し、臆することなく海外の方々と交渉できる人材 が求められています。
 皆さんの中には、グローバル人材の育成プログラムを 通して、高度な語学力を身に付けるとともに、留学や海外 インターンシップにより貴重な体験をされた方もいらっ しゃるものと思います。
 こうした在学中に得た知識や経験を活かし、グローバ ル人材として世界をフィールドに活躍されることを期待 しています。
 現代社会を牽引するリーダーを目指して頑張っていく 過程においては、抱いている希望とのギャップや様々な苦 難に直面することもあると思いますが、その経験も自分の 糧としつつ、地域や社会に貢献する人材を目指して、逞し く自分を鍛えていただきたいと思います。
 最後になりますが、これまで皆さんの成長を見守り、支 えてくれた方々への感謝を忘れず、本学の卒業生である ことに誇りを持ち、自らの人生を切り拓いてください。

北友会会報第116号(平成29年7月15日発行)掲載