北九州市立大学同窓会

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大学だより

2019年度 学位授与式

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、北九州市立大学は2月28日、「『2019年度学位授与式』及び 『2020年度入学式』の開催方針」を発表した。その内容は、@ともに卒業生・入学生と教職員のみの参加で行い、保 護者、来賓などの出席はご遠慮いただく、A予防の観点から、学生が一堂に会した式典は行わず、学科(クラス)ご とに会場を分けた分散開催とする、B挨拶は学長告辞・式辞のみを放送形式で行うなど工夫し、開催時間の短縮 を図る、C飲食を伴う「祝賀会」などは開催しない、というものだった。
 前日の27日には、安倍首相が全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日から臨時休校とするよう要請す ることを決めており、これ以降、全国の国公私立大学も学位授与式の中止・変更を相次いで公表したのはご存じ の通り。
 母校のその学位授与式は3月23日(月)に、体育館兼講堂での全体の式典は取りやめ、北方、ひびきの両キャン パスで別々に行われた。ひびきのキャンパスでの学位授与式は初めて。
 北方キャンパスでは、卒業生・修了生は学科・専攻ごとに15教室に分かれ、午前10時に始まった。袴姿の女子学 生、スーツ姿の男子学生はそれぞれの教室に入って着席。学内放送で松尾太加志学長の告辞と津田純嗣理事長の 祝辞を聞いた。この後、一人ひとりが学位記を受け取り、約20分で教室を出た。保護者や在学生が建物内に入るの を禁じ、来賓者の出席も断り、恒例の式典後の「祝賀会」も中止されたため、笑顔の少ない「門出」となった。
 ひびきのキャンパスでは、正午から大学院博士課程修了者が副学長室で、午後1時から学部卒業生と一部の大 学院修了生が5教室で、さらに午後2時から残る大学院修了生が3教室で、それぞれ学位授与式に臨んだ。松尾 学長の告辞は、北方キャンパスで録音したものをそれぞれの教室などで流した。
 こちらも予餞式は中止され、卒業生・修了生はキャンパスで別れを惜しんだ。

学長告辞
 卒業生・修了生のみなさん、 卒業・修了おめでとうございま す。本日、本学では北方キャン パス・ひびきのキャンパス合わ せて、学士1,374名、修士179名、 博士9名のみなさんに学位が 授与されます。そして、本年度 から新たに開設しました社会人のための教育i-Designコ ミュニティカレッジの50名も修了されます。
 皆さんの卒業・修了は、ご家族、地域の方をはじめ多く の方々に支えていただきました。本日は残念ながらご臨 席いただけませんでしたが、この場を借りて厚く御礼申 し上げますとともに、皆さんも感謝の気持ちを忘れない でください。
 本日の学位授与式は、新型コロナウイルスの感染拡大 防止のため、分散しての開催となりました。私たちの日常 には常にリスクが存在しています。そのリスクに際し、な んらかの意思決定を迫られます。ただし、意思決定を行う 際には、十分な情報が得られないことが多く、その判断が 正しいかどうかは、判断を下した時点ではわかりません。 ともすると、その判断は極端な判断にシフトする傾向が あることが心理学では知られています。慎重になりすぎ、 極端に安全な策をとろうとする判断、コーシャス・シフト と言われます。あるいは逆に、リスクを低く見積もり危険 を怖れない判断、リスキー・シフトと言われます。ただ、そ の判断が正しいかどうかは、後でふりかえってみたとき にはじめてわかるものです。
 そのため、後になって、よい結果になると、その判断は 正しかったと自画自賛します。一方、よくない結果をも たらしたとき、意思決定に関わらなかった批評家は、そ の判断は間違っていたと揶揄するものです。あとになっ て結果論で判断してしまうことは後知恵バイアスとい われます。
 リスク判断は、よくあみだくじにたとえられます。あみだ くじは、くじを引く時点ではそれがあたりかはずれかはわ からないものです。結果論は、あたりから逆を辿るずるい 思考にすぎません。あたりがわかっていて、その逆を辿れ ば、どの選択が正しかったかは、誰にでもわかるものです。
 私たちの人生においても、様々な節目で選択を迫られ ます。皆さんも大学や大学院に進学するとき、選択に大い に迷われたことでしょう。入学後、別の道を選んでおけば よかったと考えた方もおられるかもしれません。とかく 隣りの芝生は青く見えるものです。しかし、今ここに卒 業・修了を迎えた皆さんにとって、北九州市立大学に入 学し卒業・修了できたことに大きな喜びを感じておられ るのではないでしょうか。ただし、これは決して結果論からの判断ではありません。
 私たちの人生の選択において、後知恵バイアスは働きません。人の人生は、あみだくじとは異なるからです。人生にはあたりやはずれがあるわけではないですし、あらかじめ道筋が敷かれているものでもありません。
 私たちは、自分で選択した道に物語を紡いでいきます。物語の舞台には自分を主人公として描かれていたことでしょう。その物語を紡いでいくことはたやすいことではありません。主人公でいたつもりがいつのまにか脇役になっていたことに気づかされたこともあるでしょう。しかし、皆さんが在学中に多くの人と出会えたことが、皆さん自身にとって誇れるものであり、大きな物語であったはずです。
 皆さんは、今、物語の新たな岐路に立っています。また新しい意思決定をし、これから、皆さんの物語は新しいチャプターに入っていきます。新しい進路に、新しい物語を紡いでいかれることでしょう。人生の意思決定には、正しいとか間違いとかいったものはありません。自分の判断を意味あるものにすることが人生そのものです。それは物語の主人公になることでもありません。自分だけにしか描けない物語を紡いでいくこと、それがいつの日か皆さんひとりひとりの物語になるのです。
 今、直接皆さんの顔を見ることはできません。しかし、今皆さんは、卒業・修了に際し、未来への新しい物語に希望を抱き、晴れやかで清々しい表情で臨まれていることでしょう。改めて、皆さんの卒業・修了に祝福を申し上げ、私の挨拶といたします。

2020年3月23日
北九州市立大学長 松尾太加志

理事長挨拶(要旨)
 今回は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、苦渋の決断ではありましたが、通常の式典を中止いたしました。本来なら理事長として、卒業生、修了生の皆様に直接お祝いを申し上げるべきところですが、放送でのご挨拶にご理解いただきますようお願いいたします。
 さて、昨年の経済は世界的に減速となりましたが、今年もコロナウイルスが経済に与える悪影響が懸念され、世界各国で景気浮揚策がとられる見込みです。そんな中、中長期的な成長を確かなものとするため、わが国においては人づくり革命と生産性革命を車の両輪とした経済政策が進められています。
 人づくり革命の取り組みの一つとして、知の基盤となる大学をはじめとする高等教育の重要性が掲げられ、卒業される皆さんは、イノベーションを創出し、国の競争力を高める原動力として期待されています。
 一方、生産性については、IOTやAI、ビッグデータ等の革新的技術を活用した第4次産業革命により劇的に変化する時代が近付いています。
 このように、これまでの社会システムや産業構造など皆さんを取り巻く社会環境は変革の時代を迎えていますが、これまでも技術革新によって新たなビジネスモデルが創出されてきたように、活躍の機会を掴む絶好のチャンスでもあり、果敢にチャレンジしていただきたいと思います。
 皆さんの中には、地域貢献活動に積極的に参加し、課題を解決する力を伸ばした方や、グローバル人材の育成プログラムを通して、高度な語学力を身に付けるとともに、留学や海外インターンシップにより貴重な体験をされた方も数多くいらっしゃることと思います。こうした在学中に得た知識や経験を活かし、地域や世界をフィールドに、大いに活躍されることを期待しています。
 皆さんには、地域や社会に貢献する人材を目指していただくことを望んでいますが、その過程においては、抱いている希望とのギャップや様々な苦難に直面することもあると思います。その経験も自分の糧としながら、現代社会を牽引するリーダーへと成長されることを願っています。
 最後になりますが、これまで皆さんの成長を見守り、支えてくれた方々への感謝を忘れず、本学の卒業生であることに誇りを持ち、自らの人生を切り拓いてください。皆さんが新天地で大いに活躍されることを祈念いたしまして、私の挨拶といたします。

2020年3月23日
北九州市立大学 理事長 津田 純嗣

北友会会報第122号(令和2年7月15日発行)掲載