北九州市立大学同窓会

HOME > 活動> 大学だより >入学式

大学だより

平成30年度 入学式
「錯覚に気づき、自分自身を知る」

 平成30年度の全学合同入学式が4月4日(水)、北方 キャンパスの体育館兼講堂で行われた。本年度は学部・学 群に1,446人(うち留学生22人)、大学院に212人(同47人) と、昨年度と同数の計1,658人が入学した。同窓会費を納入 した学部生、院生はこの日から同窓会会員(学生会員)に なる。
 松尾太加志学長は、「錯覚」を主題に式辞。  「車いすの宇宙物理学者」として知られた英ケンブリッ ジ大学教授のスティーブン・ホーキング教授の言葉「知識 における最大の敵は無知ではなく、知っていると錯覚する ことだ」を引用し、「わかっていないと感じていれば、何か できます。しかし、知っている、わかっていると錯覚してい るときは、すでにゴールに来ていると思っているため、そ れ以上のことはしようとしません。今、皆さんには北九州 市立大学に入学できたという成功経験があり、それが皆 さんの脳裏に喜びの思いを抱かせていることでしょう。し かし、それは錯覚かもしれません。また、皆さんの中には、 喜びという思いに至っていない方もおられるかもしれま せん。しかし、それとて一時の錯覚かもしれません。大学で の学びは、自分の錯覚に自分で気づき。学問の本当の世界 を知り、自分自身を知ることです」と新入学生に、気分を引 き締めて学ぶよう促した。
 津田純嗣理事長は「大学生活は、これからの人生の目標 を実現していくために必要な能力を磨くことができる大 切な時期です。学問と様々な体験を通じて知識と経験を 身につけるとともに、友人や幅広い分野の方々との交流を 通じて人脈や視野を広げるなど、この期間を最大限に活 用していただくようおねがいします」と挨拶。
 来賓の北橋健治北九州市長(代理・梅本和秀副市長)、 井上秀作北九州市議会議長が祝辞。井上議長はここでも 本学の卒業生に日本環境設計代表取締役会長の岩元美 智彦氏がいることを紹介。「皆さん、誇りに思ってくださ い」と述べ、「この大学で生涯の友人をつくってください」 と熱く語った。
 この後、新入生を代表して、国際環境工学部建築デザイ ン学科の渕上貴史さんが「勉学にいそしみ、専門的な知識 や技術を習得し、地域の産業、文化の発展に寄与し、ひい ては国際社会に貢献できる人間となるべく邁進する」と宣 誓した。
 休憩後、新入学生と保護者を対象にしたオリエンテー ションが開かれた。同窓会からは前年度に続いて、組織 対策担当の隅川智宏幹事(H1・経済)が登壇、同窓会が 行っている学生支援策について丁寧に、分かりやすく説 明した。
 新入学生には今年も、表紙に「今日からあなたも同窓会 会員です」と刷り込んだ北友会会報・入学歓迎号を、保護 者には「号外」としてそのダイジェスト版を配布した。

松尾太加志学長式辞〈要旨〉
 今、皆さんは、入学試験を乗 り越え北九州市立大学に入学 できた喜びでいっぱいではな いでしょうか。しかし、ほんとう に喜んでいただきたいのは、皆 さんが卒業・修了されたときで す。
 人間は、錯覚をする動物だと言われます。自分が見てい る世界、感じている世界は錯覚にすぎないのです。ここで いう「見ている」というのは、目でみる視覚世界だけを指す わけではなく、自分が考えているもの、自分が思っている もの、それらを含めて「見ている世界」です。
 視覚世界に関して言えば、私たちが見ている世界は眼 という感覚器官を通して取り入れた情報をもとに、脳の中 に都合のいいように作り上げているにすぎません。そのた め、私たちが見ていると思っている世界は物理的世界と は同じではなく、見ているものすべてが錯覚だと論じる心 理学者もいます。ただ、それが錯覚であったとしても、物理 的世界と私たちが見ている錯覚の世界がうまく対応でき ていれば、現実に生活をする上で何ら問題はありません。 実際にはほとんどうまく対応できています。しかし、そこ にずれが生じてしまうと、錯覚であったと意識されてしま います。
 錯覚というと一見悪いイメージに捉えられますが、錯覚 をするのは人の常であり、必要悪でもあります。
 たとえば、心理学では「優越の錯覚」といわれる現象が 知られています。自分自身の能力などを、自分が平均より も優れていると思ってしまう錯覚です。私たちは、自尊心 を持ち、ある程度自信を持つことが必要です。そうでなけ れば、すべてに消極的になり、何もできなくなってしまい ます。他者よりも実際には劣っていたとしても、他者より 優れていると錯覚しているほうが、精神衛生上は好まし いのです。
 ただし、自信過剰になり慢心に陥ってはいけません。今 年の平昌オリンピックのスピードスケートで活躍した高 木美帆選手は、前々回のバンクーバー五輪に出場できた ものの、前回のソチ五輪では代表にさえ選ばれなかったと いう苦い思いをされました。若くしてバンクーバー五輪に 選ばれたのに、次のソチ五輪に向けて、しっかりとオリン ピックに向き合うことができなかったということです。
 この3月に亡くなられた理論物理学者のホーキング博 士は、以下のような言葉を残しています。「知識における最 大の敵は無知ではなく、知っていると錯覚することだ」。わ かっていないと感じていれば、何かできます。しかし、知っ ている、わかっていると錯覚しているときは、すでにゴー ルに来ていると思っているため、それ以上のことはしよう としません。それは知識だけではなく、技能においても同 じことです。これは、知識や技能の錯覚といってもいいで しょう。
 高木選手は、ソチ五輪で代表に選ばれなかったことで、 自分の技量が高いと思っていたことが錯覚であったと気 づかされたことでしょう。錯覚に気づいたことが、平昌の オリンピックでの素晴らしい成果につながったのではな いでしょうか。
 アスリートは、競技の結果から錯覚であったことを知る ことができます。しかし、私たちは行動を起こさなければ、 自分が錯覚していたのか、そうでなかったのか、気づくこ とはできません。それは、視覚世界における錯覚でも同じ です。ただ見ているだけでは錯覚であることに気づけま せん。手を伸ばしてみたり、体を動かしてみたり、違う角度 から見たりしたときに、何か変だと感じ、自分が見ている 世界が錯覚だったことに気づかされるのです。じっとして 何もしなければ、錯覚は錯覚のままです。錯覚に気づくこ とはなく、前に進むこともありません。
 今、皆さんには、北九州市立大学に入学できたという成 功経験があり、それが皆さんの胸裏に喜びの思いを抱か せていることでしょう。しかし、それは錯覚かもしれませ ん。ひょっとすると、あなたに仕掛けられた罠であるかも しれません。喜びやときめきは、これから訪れるであろう 錯覚との葛藤の罠なのです。大学に入り実際の学問に触 れたとき、自分がイメージしていたものと違っていると思 うことがあります。時には、なんでこんなことまで勉強しな ければならないのかと思うこともあります。そう感じてし まうのは、わかっていると錯覚しているからです。罠から 逃れることは大変かもしれません。しかし、そこで何もせ ず気づくことがなければ、錯覚が錯覚のままで終わってし まいます。
 また、皆さんの中には、喜びという思いに至っていない 方もおられるかもしれません。しかし、それとて一時の錯 覚かもしれません。
 大学での学びは、自分の錯覚に自分で気づき、学問の 本当の世界を知り、自分自身を知ることです。錯覚である のかどうかは、頭の中で考えていただけではわかりませ ん。実際に行動を起こし、自分の知識や技能を実際に発 揮できる場面に立たせることが必要です。そして、その 成果を自分で確かめてみてください。きっとうまくいか ないことのほうが多いでしょう。うまくいかないからこ そ、優越の錯覚に気づき、知識や技能の錯覚にも気づく のです。
 それに気づけば、今日、今、皆さんが抱いている思いの 錯覚はいずれ解決されるでしょう。きっと、皆さんが卒業・ 修了されたとき、そのときの思いは錯覚ではなく、真の喜 びとなることでしょう。そうであることを信じ、私の式辞と いたします。

 

津田純嗣理事長挨拶〈要旨〉

 本学は昨年、創立70周年を迎 え、新図書館が誕生するなど、 記念すべき年となりました。小 倉外事専門学校を前身とする 長い歴史の中で、全国88校の公 立大学の中でも4番目の規模 を有する総合大学へと成長し てきました。
 これから目標も新たに、新入生の皆さんとともに、将来 の創立百周年に向けた第一歩を踏み出していきたいと思 います。
 さて、日本では急 速にグローバル化 が進展し、社会に おいては、語学力は もちろん、その国の 文化や歴史、商習 慣なども理解し、世 界で活躍できる人 材が求められてい ます。
 本学では、この 時代の要請に応え るため、平成24年 度より国に先駆けてグローバル人材の育成プログラムを 開始しています。
 皆さんには、これからの大学生活を通じて、語学力を磨 くとともに、実際に海外の文化に触れるためにも、留学や 海外インターンシップなどに積極的に挑戦していただく ことを期待しています。