北九州市立大学同窓会
大学だより
平成24年度 学位授与式
地域創生学群から初の卒業生 1,483人の巣立ち 満開の桜が祝福 例年より10日も早く満開となった桜が学位授与式を祝うかのよ
うに咲き誇る中を、華やかな振り袖、袴に着飾った女子学生が次々
に校門をくぐる。3月23日(土)は朝から快晴。付き添いの家族も満
面の笑顔で子供の友達やその両親と挨拶を交わしながら、大学生
活を終えた我が子の成長ぶりに目を細めている様子がうかがえる。
全学合同の学位授与式の式場は北方キャンパスの体育館兼講
堂。午前9時30分の開場前から卒業生と家族の列が延々と続いた。
入場する家族には法被姿の同窓会本部役員が北友会会報の「卒業
祝賀号(刷新版)」を手渡した。「卒業祝賀号」を家族に配布するのは
初めての試みである。用意した1,000冊を配布し終えた本部役員の
次の仕事は、北友会会報に載せる卒業生へのインタビューとス
ナップ写真の取材。それぞれが忙しく動き回った1日になった。
午前10時から式典が始まった。同窓会からは田村允雄会長は
じめ幹事長、副会長が参列した。今年の卒業生は学部卒業者が
1,316人、大学院修了者が167人、卒業者総数は1,483人。このうち
女子学生が783人、男子学生が700人で、今年も女性上位の学位授
与式となった。この中には35人の留学生も含んでいる。
式典は近藤倫明学長の告辞、石原進理事長の挨拶、北橋健治北
九州市長および三原征彦北九州市議会議長の来賓挨拶と続い
た。近藤学長は告辞の中で「本学で6番目の学士課程として設置
した地域創生学群の第1期卒業生である皆さんは、自分たちが
自ら伝統を創るパイオニアとして、地域に関する理論と現場理
解により地域社会をマネジメントし、地域の再生と創造に貢献
できる人になって欲しい」と地域創生学群の卒業生にエールを
送るとともに、全卒業生に対して「グローバル化した予測不可能
な現代社会を生き抜くため、本学の卒業生であることに自信と
誇りを持って、自らの力を信じ、自らの志を高く掲げ、安きに流
れず、日々努力を重ね、チャレンジすることを忘れず、自らの人
生を生き抜いて欲しい」との言葉を贈った。
卒業生総代の謝辞が始まった。総代は地域創生学群・第1期卒
業生の図師万理子さん。謝辞は「君たちは優秀だ。しかし、未熟で
もある」という伊野憲治学群長から入学時に贈られた言葉で始
まった。よく通る声で、落ち着いて丁寧に読み上げる図師さんの
謝辞は、4年間の思い出と、恩師をはじめ家族や地域社会の人た
ちへの感謝の言葉でちりばめられていた。最後に「入学した当
初、一人で進んでいるように感じていた道は、今振り返れば本当
は多くの方々の支えによって歩むことができていました。そし
てここで迎える4度目の春。社会に旅立つ私たちの耳にはあの
言葉が蘇ります。『君たちは優秀だ。しかし、未熟でもある』。この
言葉をこれからも胸に、北九州市立大学で学んだ謙虚な心を忘
れることなく生きることをここに誓います」と結んだが、謝辞の
途中から会場のいたるところで目頭を押さえる人の姿が目につ
いた。学位授与式はコールユーフォニーの合唱と吹奏楽団の演
奏による校歌斉唱で閉式となった。
式終了後、卒業生たちは家族と一緒に思い出の校舎やキャン
パス風景をバックにカメラに収まったり、ゼミやサークルの後
輩たちから花束を贈られたり、胴上げされたりしながら、門出を
祝福されていた。午後からは、北方キャンパスでは「卒業生祝賀
会」、ひびきのキャンパスでは「ひびきの予餞祭」が開かれた。
卒業したての後輩たちはそれぞれに違う道を歩み始める。社
会の荒波の中で一歩一歩前進して、母校で学んだことを生かし、
大きく羽ばたいて誇りある人生を創造して欲しいという思いで
胸が熱くなった。
<学長祝辞>
学士課程を卒業する多くの皆さんは、4年前の平成21年4月、
新入生としてこの場で行われた入学式に臨みました。とりわけ
本学の6番目の学士課程としてその年に設置された地域創生学
群の皆さんは1期生として初めての新入生でした。その時地域
創生学群ではまだ目標にする先輩も、相談する先輩もなく、自分
たちの歩みがそのまま地域創生学群の軌跡となる1期生でし
た。自分たちが自ら伝統を創るパイオニアとして歩む重圧と不
安を抱え、そして新たな歴史を創る者の自覚と希望としての決
意が混在していた4年間の学生生活だったと思います。
地域創生学群は「幅広い教養と実践力を持った専門性を備え、
地域に関する理論と現場理解により地域社会をマネジメントし、
地域の再生と創造に貢献できる人材の養成」を教育目的にしてい
ます。地域の課題を発見し、地域市民と一緒に解決策を見つける、
課題解決型の教育を実践しています。これまでの大学教育がキャ
ンパス内の講義室での授業を中心にした教育スタイルであったも
のから新たな試みとして、キャンパスから地域に出て多世代間、多
文化間のコミュニケーションを通して、現場での実習の中で学生・
教員が共同で活動する新たな教育システムを取り入れています。
新たな取り組みでは必ず経験する試行錯誤の連続の中での学び
の4年間だったと思います。教育プログラムのまとめとして、学生
の地域活動を支える地域共生教育センターと共同で毎年開催され
る地域創生フォーラムは、今年2月に第6回を数え、学生と地域の
皆さんが一緒に集う学習の場として定着しています。現在、地域共
生教育センターには単に地域創生学群の学生に止まらず、全学か
ら学部・研究科を超え1,000人を超える多くの学生が自ら登録し、地
域活動のプロジェクトやボランティア活動に参加しています。
文部科学省は昨年6月「大学教育改革実行プラン」を発表し、
大学が地域社会の中核となることを提唱しています。本学はす
でに地域での独自の取り組みにおいて、これからの大学が目指
す新たな姿を実践的に証明し、一つの事例として位置づけたと
いえます。地域創生学群の卒業生の皆さん、新たな世界で歩みを
進めてください。きっと後輩たちがその後ろ姿を見つめそのあ
とを継承してくれるでしょう。
グローバル化の中で本学の学生の地球規模での交流が年ごと
に進んでいます。今年の卒業生の中には海外からの留学生が35
人います。また本学から海外の大学へ留学する学生も年ごとに
増えています。卒業生の皆さんの中にも海外での留学経験者が
多くいます。国際化に伴う多様性の中で多文化を理解するため
には、自国の文化歴史を学び、コミュニケーション力を身に付け、
表現力を養う必要があります。地球規模での文化・歴史・価値の
共有と理解、そして未解決の課題への相互理解は未来を担う皆
さん方に大学から託された課題でもあります。昨年来大きな政
治問題となった島の領有権をめぐる中国・韓国と日本との関係の
悪化。その中で大学はいかなる役割を持ち得るのでしょうか。
大学は教育・研究そして地球規模の社会貢献を通して世界の
人類および社会の発展に貢献することを設置理念に掲げていま
す。国際化したキャンパスで国を超えてともに学び、生活するこ
とを通して互いに理解し合った皆さんは未来への希望です。地
域を超え、国を超え対話を通して世界を構築するその良き理解
者になることを支える場が大学の使命の一つといえます。
私たちを取り巻く社会の変革をもたらす出来事は、グローバ
ル化した現代社会では直接私たちの日々の生活に侵入し、影響
を及ぼします。皆さんは高等教育の最後の段階である大学を卒
業し、この社会を構成する一員として新たな一歩を踏み出しま
す。そこには皆さんがこれまで経験したことのない厳しい現実
があり、その現実に社会人として直面しなければなりません。
本学は、教育の理念として、現代社会でたくましく生き抜く力
を身に付けた人材育成を掲げ、取り組んでいます。激しく変化す
る予測不可能な現代社会を生き抜くために、現代社会が生み出
す様々な課題を自ら考え、自ら解決し生きていく基盤となる能
力を身につけることを目指しています。本学の教育課程を終え
晴れて卒業する皆さんは、この教育の成果である基盤力と、加え
てそれぞれの専門的知識を学部学科、学群学類そして大学院研
究科で習得しています。
本学で身に付けたその学びを社会人として生かすことが、こ
れからの人生を紡ぐということです。本学の卒業生であること
に自信と誇りを持って、臆せず新たな世界に旅立ってください。
混迷する時代に、自らの力を信じ、自らの志を高く掲げ、安きに
流れず、日々努力を重ね、チャレンジすることを忘れず自らの人
生を生き抜くことを、私からの贈る言葉とします。
平成25年3月23日
<理事長祝辞>
日本や世界の情勢は近年大きく変化しています。いわゆる先
進国と言われる欧米諸国・日本が財政赤字等で苦しむ中、中国・
インド・ブラジル等をはじめとした新興国が世界経済で台頭し
てきております。特にアジアにおいては中国やインドのみなら
ず、タイやベトナム等、東南アジア諸国の経済成長が著しく、世界
経済の中心が欧米からアジアに移ったとさえ言えます。中国は
20年にわたり7%以上の経済成長を続け、2010年にはGDPにお
いて日本を抜き世界第2位となりました。また、韓国はいち早く
新興国市場の開拓に乗り出しております。サムスンやLGは人材
教育に力を入れるとともに、日本の牙城であった家電製品にお
いて日本を凌駕しつつあります。台湾においては、2010年9月に
発効したECFAにより、経済が活況を呈しており、今後さらに中
国経済との一体化が加速するでしょう。また香港やシンガポー
ルは世界中から人、モノ、情報を集めることにより急成長してい
ます。
一方で日本は少子高齢化、人口減少、崩壊寸前の社会保障制度、
GDPの2倍以上にものぼる公的債務、デフレに伴う経済低迷に加
え、未曾有の大災害となった東日本大震災からの復旧・復興費用
の負担、そしていつ収束するか分からない原子力発電所の事故処
理等多くの難問を抱えています。今の日本には閉塞感が漂い、危
機的な状況にあると言えます。10年、20年先に今、我々が享受して
いる豊かな生活が維持できるのか確たる保証はありません。
我々は日本が抱えるこれらの課題を解決し、未来に向けて希
望のある国をつくっていく必要があります。そのためには優秀
な人材が必要です。
日本の抱える課題を解くカギは、成長する外国の活力をいか
に日本に吸収するかにあります。そのためにはグローバルに活
躍できる人材が必要です。世界で活躍するには決断力、行動力、
説得力、交渉力に加えて、日本の歴史・文化についての素養、語学
力、外国文化に対する理解が必要です。これらを総合的に兼ね備
えた人間力を向上させることが大切です。
科学が急速に発達し、技術革新が頻繁に起こる現代社会では、
常に自分自身の能力向上を図る必要があります。広い分野の知
識や経験を身に付けるための勉強を怠ってはいけません。今後、
与えられるポジションでの知識や経験を積み重ね、努力するこ
とはもちろん、単にその世界だけにとどまらず広い視野で自己
研鑽に励んでください。
今後とも、目標と志を高く持ち、その実現に向かって積極的に
チャレンジしてください。そして、本学の卒業生として矜持とプ
ライドを持って、自らの人生を切り拓いてください。皆さんの大
いなる活躍と発展を祈念いたします。
平成25年3月23日
<卒業生総代謝辞(要旨)>
「なければ、つくればよい、地域創生学群」。この風変わりな
キャッチフレーズを耳にしたのは18歳、夏の終わりでした。大学
に入ったらアルバイトでお金を貯め、旅行をいっぱいして一人
暮らしを満喫する。そんな学生生活を描いていた私にとって、良
い意味でたくさん裏切られました。まず教わったのは「地域で活
動する上での姿勢」です。手初めは身なりから。髪が茶色すぎる、
爪は伸ばすな、化粧は薄く。大学生になってまで服装検査がある
のかと、あっけにとられました。後々自分のためになるという事
もちゃんと分からなかった当初は、厳しい学群に入ったものだ
と皆で言い合ったものでした。
1期生である私たちには先輩方がおりません。そのため先生
方のご指導に、がむしゃらについていく毎日。次第に2期生、3
期生と後輩ができ、指導される側から指導する側へと成長して
参りました。自分たちのことで必死だった1年目に比べ、少しず
つ全体を見ることができるようになってきたあの頃。ふと自分
を省みれば、地域に貢献できる人材とはほど遠く、ただただ地域
の方々から学ばせていただいているばかりであると気づくので
した。「私は果たして成長できているのだろうか、私の行いが誰
かのご迷惑になってはいないだろうか」。そう不安に思い、立ち
止まることもありました。時に、1期生としての喜びやプライド
を感じ、時に、1期生としてのプレッシャーを感じ、私たちがこ
の地域創生学群を創りあげていくのだという強い思いの中、4
年間を無我夢中で生きてきた気がします。その日々は大変多く
の方々の支えで成り立っていました。
サークルやアルバイトでは、実習とは違った仲間との楽しい
一時を過ごせました。違うモノの考え方を持った他学部同級生、
先輩、後輩との関わりにより受けた刺激は、新たなアイデアを生
みだすことへ繋がりました。2010年4月には地域共生教育セン
ター421Lab.も設立され、地域へ出て何かしたい活動的な学生と
接する機会も増え、私たちの学内での繋がりも急速に広がって
いきました。切磋琢磨し合った同級生、先輩、後輩の皆様へ、あり
がとう、と心より感謝の気持ちを伝えたいと思います。
また、地域社会をひとつのテーマとして総合的に学びを得ら
れる地域創生学群は、他の学部の授業を受講することができて
初めて成立いたします。総合大学である強み、そして私たちを受
け入れてくださる他の学部の柔軟さがあったからこそ、学びを
得られました。さらに、地域へ出る上で、職員の皆様が多方面で
バックアップをしてくださり、活動を展開することができまし
た。教職員の皆様方へ、心から感謝申し上げます。
そして何より遠く故郷から、だけど一番近くから見守ってくれ
た両親。「困った時しか電話をくれない」と愚痴を言われながらも、
近況の報告をいつも一番に喜んでくれました。4年前この場で執
り行われた入学式は、出席したいという両親を「来なくていい」と
必死に止めました。本当はとても来て欲しかった。でも、これから
見知らぬこの土地でひとり、暮らしていくのだという決意が、顔を
合わせることで揺らいでしまいそうだったからです。でも今日は、
この式場で私を見守っていてくれています。離れていても気持ち
を一番に察してくれた両親へ、素直にありがとうと伝えたいです。
入学した当初に一人で進んでいるように感じていた道は、今
振り返れば本当は多くの方々の支えによって歩むことができて
いました。皆様がそばにいてくれたから、今日私はここにいま
す。多くの方々に支えられ4年が過ぎ、私たちは母校を去りま
す。社会に旅立つ私たちの耳には、あの言葉が蘇ります。「君たち
は優秀だ。しかし、未熟でもある」。この言葉をこれからも胸に、
北九州市立大学で学んだ謙虚な心を忘れることなく生きて参り
ますことをここに誓い、母校の更なるご発展と、本日ご臨席賜り
ました皆様のご多幸とご健康を祈念し、卒業生、修了生代表の謝
辞とさせていただきます。
平成25年3月23日